付加価値税(VAT)は、EU加盟国すべてと英国を含む170を超える国で課されています。VATの登録事業者にとって、請求書は支払いの請求であるだけでなく、事業者の顧客がVATを控除するための税務書類でもあります。このガイドでは、基本事項を説明します。VATをいつ請求するか、どう計算するか、VAT請求書に何を記載するか、そしてEUでの国境を越える販売とリバースチャージの仕組みです。
VATは複雑で、国ごとに独自のルール、基準、例外があります。このガイドは主にEUを対象に、一般的な枠組みを説明するもので、税務上の助言ではありません。ご利用の前に、税務当局または税理士にご確認ください。
VATを請求する必要があるか
VATを請求するのは、VATに登録している(または登録が義務づけられている)場合だけです。登録は、各国のルールによって決まります。
- ほとんどの国に、年間売上高に基づく登録基準があります。基準を下回る小規模事業者は、通常、未登録のままでいられます。その場合は、VATを請求してはいけません。
- 一部の事業者には、基準がない、または非常に低い基準が適用される国もあります。
- 基準を下回っていても任意で登録できることが多く、その場合は仕入れにかかるVATを控除できますが、売上にはVATを請求する必要があります。
例:英国の登録基準は、課税売上高£90,000です(2024年4月から)。EUでは、各加盟国が独自の小規模事業者の基準を設けており、2025年からは、EUの制度により、一定の要件を満たす小規模事業者が他の加盟国でも免税を利用できるようになりました。基準は変わるため、お住まいの国の現在の数値をご確認ください。
登録していない場合、請求書にはVATを表示しません。また、理由の説明を求める国もあります。たとえばドイツの小規模事業者の規定は、通常「Gemäß § 19 UStG wird keine Umsatzsteuer berechnet」(「UStG第19条に基づき、付加価値税は請求しません」)と参照されます。
VATの計算方法
VATは、税抜(課税対象)金額に対する割合です。
- VAT = 税抜金額 × VAT税率
- 税込 = 税抜 + VAT
20%の例:税抜£1,000 → VAT £200 → 合計£1,200。
VAT込み(税込)の価格からVATを求めるには:
- VAT = 税込金額 × 税率 ÷(1 + 税率)
例:20%のVAT込みで£1,200 → VAT = 1,200 × 0.20 ÷ 1.20 = £200。
1枚の請求書に複数の税率がある場合
多くの国には、標準税率に加え、1つ以上の軽減税率(食品、書籍、交通など)があります。請求書に異なる税率の品目が含まれる場合は、税率ごとの税抜金額とVAT額を表示します。
| 税率 | 税抜 | VAT |
|---|---|---|
| 21%(標準) | €1,500.00 | €315.00 |
| 9%(軽減) | €200.00 | €18.00 |
| 合計 | €1,700.00 | €333.00 |
| ご請求金額 | €2,033.00 |
日本の消費税でも同様に、標準税率10%と軽減税率8%の品目が混在する場合は、税率ごとに区分した合計額と消費税額を記載します。
EU各国の標準VAT税率(一部)
| 国 | 標準税率 |
|---|---|
| ドイツ | 19% |
| フランス | 20% |
| イタリア | 22% |
| スペイン | 21% |
| オランダ | 21% |
| アイルランド | 23% |
| ハンガリー | 27% |
EU法は、標準税率を15%以上とすることを求めています。税率は随時変更されるため、請求前に現在の税率を確認してください。国別の請求書テンプレートに、各国の税の名称と税率を掲載しています。
VAT請求書に必要な記載事項(EU)
EUのVAT指令は、完全なVAT請求書に記載すべき項目を定めています。実施は加盟国の国内法によりますが、中心となる項目は次のとおりです。
- 発行日
- 重複しない連番(請求書番号をご覧ください)
- 供給者のVAT識別番号
- 顧客が納税義務を負う場合(リバースチャージ)、または物品のEU域内供給の場合は、顧客のVAT番号
- 供給者と顧客の氏名または名称、および住所
- 物品の数量と性質、またはサービスの範囲と性質
- 請求日と異なる場合は、供給日(または前払い日)
- 税率または免税ごとの課税対象額、VAT抜きの単価、単価に含まれない値引き
- 適用したVAT税率
- 支払うべきVAT額
- VATを請求しない場合:免税への言及、または**「Reverse charge」**の文言、あるいはその特定のケースで必要とされるその他の文言
英国のVAT請求書のルールも、非常に似ています。より広いチェックリストは、請求書の記載事項をご覧ください。
国内取引と国境を越える取引
すべての取引で重要な問いは、課税地、つまりどの国のVATが適用されるかです。EUに所在する売り手の場合、簡略化すると次のとおりです。
| 取引 | 一般的なVATの扱い |
|---|---|
| 自国の顧客への販売(B2BまたはB2C) | 自国のVATを請求する |
| 他のEU加盟国の事業者へのサービス | リバースチャージ:請求書にVATは載せず、顧客が処理する |
| 他のEU加盟国のVAT登録事業者への物品の出荷 | ゼロ税率/免税のEU域内供給(輸送の証拠が必要)。顧客がVATを処理する |
| 他のEU加盟国の消費者へのサービスまたは物品 | EU全体の国境を越えるB2C販売が年間€10,000を超えるまでは自国のVAT。超えたら顧客の国のVAT(通常はOSS経由) |
| EU域外への物品の輸出 | 原則ゼロ税率(輸出の証拠が必要) |
| EU域外の顧客へのサービス | B2Bではしばしば、EUのVATの対象外だが、サービスの種類によって異なる |
特別なルールも多くあります。たとえば、土地に関連するサービス、旅客輸送、イベントの入場、レストランのサービスには、別の課税地ルールが適用されます。
リバースチャージの仕組み
リバースチャージでは、供給者ではなく顧客がVATを処理します。最も一般的なケースは、他のEU加盟国のVAT登録事業者にサービスを提供する場合です。B2Bのサービスは、顧客が所在する場所で課税されるというのが一般原則で、顧客が自国の申告で自己査定してVATを納めます。
請求書での対応
- EUのVIESサービスで、顧客のVAT番号を確認し、確認の記録を保管する。
- 請求書上は0%/VATなしとする。
- 自社と顧客の両方のVAT番号を表示する。
- 「Reverse charge」の文言を追加する(法的根拠として「理事会指令2006/112/EC第196条」などを併記する事業者も多い)。
- VAT申告書、およびEUでは要約申告書(EC Sales List)に、売上を報告する。
リバースチャージの請求書の例
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 供給者 | Studio Nord ApS, コペンハーゲン, デンマーク · VAT DK12345678 |
| 顧客 | Lumen Software GmbH, ベルリン, ドイツ · VAT DE123456789 |
| サービス | UXデザインサービス、2026年10月 |
| 税抜金額 | €4,000.00 |
| VAT | €0.00 |
| 合計 | €4,000.00 |
| 注記 | Reverse charge — VAT to be accounted for by the recipient (Art. 196, Directive 2006/112/EC) |
(VAT番号は例示用です。)
不正対策として、特定の業種(建設サービス、金属くず、一部の電子機器など)に国内リバースチャージを適用する国もあります。これらの業種で事業を行う場合は、現地のルールを確認してください。
他のEU加盟国の消費者への販売:OSS
通信販売で物品を売ったり、デジタルサービスなどのサービスを他のEU加盟国の消費者(B2C)に提供したりする場合、EU全体での国境を越えるB2C販売の合計が年間€10,000を超えると、顧客の国でVATが課されます。すべての国で登録する代わりに、**ワンストップショップ(OSS)**を利用できます。各顧客にその国のVAT税率を請求し、自国で四半期ごとに1回のOSS申告を行います。
EU域外に所在し、EUの消費者にデジタルサービスを販売する事業者は、一般に最初の販売からVATを請求する必要があり、非EU向けのOSS制度を利用できます。
日本の消費税との違い(参考)
日本では、VATに相当する税は消費税で、標準税率は10%、軽減税率は8%です。日本の課税事業者は、適格請求書等保存方式(インボイス制度)のもとで、登録番号(「T」+13桁)などを記載した適格請求書を発行します。国外の事業者が国内の事業者に提供する電気通信利用役務などについて、リバースチャージ方式が適用される場合があるなど、日本固有のルールがあります。日本の消費税の取り扱いは、国税庁の案内または税理士にご確認ください。
実務上のヒント
- **請求書は速やかに発行する。**EUの規則は、一般に、EU域内供給の請求書を供給の翌月15日までに発行することを求めており、国内の請求書にも短い期限を設けている国は多くあります。
- **VATの端数処理に注意する。**VATを行ごとに計算するか合計で計算するかを一貫させ、セント単位に四捨五入します。
- **外貨建ての請求書:**EUと英国では、VAT額を現地通貨で表示する必要があります。外貨建ての請求書をご覧ください。
- **訂正:**発行後のVAT請求書は、決して編集しないでください。クレジットノートを発行します。
- **電子請求書が始まっています。**EUのいくつかの国では、すでにB2B販売に構造化された電子請求書を義務づけており、EU全体のルールも段階的に導入されます。電子請求書とはをご覧ください。
- 国が求める期間、請求書、VIESの確認、輸送の証拠などの記録を保管する。
VAT請求書にBillKitを使う
請求書作成ツールで、税の名称(VAT、MwSt、TVA、IVAなど)と税率を設定し、自社と取引先のVAT番号を追加して、備考欄に「Reverse charge」などの文言を入れます。VATがゼロの請求書では、税率を0%に設定して理由を追加してください。
繰り返しになりますが、これはEUと英国のVATルールを簡略化した概要で、一般的な情報の提供のみを目的としています。法律・税務上の助言ではありません。税率、基準、要件は変わります。税理士または税務当局にご確認ください。